「よぉ」
至って気軽い調子で声を掛け、ミルガウス国右大臣サリエルは石壁にもたれかかったカイオス・レリュードと、目線を合わせるように片膝をついた。
「どーやら、めでたく正気みたいだな」
語尾が闇に吸い込まれ切る前に、返事は返ってきた。
普段どおりの――淡々とした声音だった。
「…それはどうも」
「相変わらず、そっけないヤツだな。せっかく俺がこんなところまで来てやったってのに」
「…」
彼は目を細めてサリエルを見る。
さっさと用件を言え、と青い色をした冷めた目が物語っていた。
青年は――カイオス・レリュードは、普段どおりに見えた。二十日間の投獄生活の結果、どこか疲れたように見えることを、除きさえすれば。
「…なんで」
ふっと、サリエルは呟く。
目の前の彼は――あまりに変わり果て、しかし、あまりに普段どおりの雰囲気を携えていた。
こんな場所でさえも。
――死と狂気が充満する、こんな地下牢の中にあってさえも。
「お前がそんな」
「…予想できて、しかるべきだろう」
独白めいた自身の言葉に、しかし返事が返ってきて、サリエルは目を瞬かせる。
カイオスの意図がつかめず、思わず問い返した。
「………何?」
「どこの、誰が、名も年齢も――出自も明かさない人間を信頼すると?」
どうやら、先ほどのサリエルの言葉を、『どうして、石版など盗んだのか』といったような風に、解釈したらしい。
しかし、その問いの返事として投げやりに返された異国人の言葉に、サリエルはただ、立ち尽くすしかなかった。
「………」
改めて言葉として受け取って、初めてサリエルは、青年の立場の特殊を思った。
そして、同時にかみ締めていた。――彼は、同じセリフを以前にも聞いたことがあった。二年前…新左大臣就任式の前夜。
どこの誰が、こんな人間を国の担い手として受け入れる、と。
そのときの情景を少なからず重ねて、サリエルは慎重に言葉を選ぶ。
「…少なくとも――俺は、信じているが」
「それはまた…嬉しい事だな」
ため息混じりに、さもうんざりとしたように吐き出されては、どう謙虚に受け止めても、嫌味以外には聞こえなかった。
サリエルは、そのまま口を開いた。
自身が思ったこと、そのままを口にした。
「お前は…信じていないのか?」
「何を?」
「俺たちを」
「…」
何かを即答しかけた口が、思案をするように止まる。
水音が大分大きくなった頃、さあな、と呟いて、彼は続けた。
「ヴェスロ・スルーダ」
「?」
「レッセル・ランディード」
「おい、一体…」
「ディー・ルラージュ。セシリオ・ディーン。………――」
口ずさむように、次々と放たれる言葉に――サリエルは軽く狼狽した。
サリエル自身、実感あることだったが――このカイオス・レリュードという青年は、なぜか『人の名前を覚える』ということに対して、驚くほどに記憶力がない。
『サリエル』という名前を呼んでもらうのに半年掛かったのだが、それが、無視や無関心の類ではなく、ただ単に『覚えていなかった』ためだと分かった時には、あいた口が塞がらなかった。
理由を問い詰めると、『他人の名前を呼ぶ環境になかった』との、解釈に困る答えが返された記憶がある。
その、彼が――なにやら、人間の名前らしきものを、次々と呟いている。
「ドン・ティリンズ。シルロ・ギヤマーテ。ラッスル・レンダーラ。…―――」
(待てよ)
そこに、幾人か聞き覚えのある――しかも、ごくごく最近耳にした名前を聞き取って、サリエルは眉をひそめた。
そして、はっとする。
『国境守備隊二百人』。
石版が盗まれてから――最初の犠牲者となった者たちの、名前だった。
「ジェイル・セリエ。ダラス・ティーダ。…――」
気の遠くなるような時間――少なくとも、サリエルにとっては、そうだった――その名を挙げた後、カイオスは、多少口元をゆがめた。
「これで、二百人」
「………」
「アレントゥムには、何人いたんだろうな」
「っ…!!」
ぞっとするほどに静かな声色に、サリエルは、思わず拳を握り締める。
それを表情の読めない顔でちらりと見取ると、彼はふっと息をついて目をとじた。
「ここまで来ると、信用がどうとかいう問題じゃない。理由や、状況なんて、関係ない。死んだ人間は、そこで『終わり』だ。――俺が…『ミルガウスの左大臣』が、石版を盗み出したせいで、何人の人間が死んだと思っている。そう、彼らは、俺が殺した。――それは、紛れもない。仮に――彼らのうちの幾人かがお前の言うように『ミルガウスの左大臣』を信頼していたとする。――これ以上の裏切りもない」
「しかし、――」
「『ミルガウス』を選ぶか、『世界』を選ぶか。――俺は、どちらも選べなかった。選んだのは、あの女で、俺じゃない。そしてその結果が、『これ』だ」
迷いのない声は、サリエルの言葉を封じ込める。
「何を…――言っているんだ。どういうことなんだ…」
やっと口を開いた右大臣に向けて、うっすらと目を開けて視線を落とし、多少自嘲の調子を滲ませて、カイオスは言い切った。
「要は、俺には償いようがない事態を引き起こした。――そういうことだ」
そして彼は、視線をあげ、まっすぐにサリエルを見つめると、きっぱりと言った。
「何を言いに来たかは、大体想像が付く。――しかし、俺は『ここ』を出る気はない」
ミルガウスを選ぶか、世界を選ぶか。
この最悪の二択を、最初七君主から突きつけられたとき、カイオスは『ミルガウス』を選んだ。
――選ばざるを得なかった。
現在の、――あからさまに金髪青眼の容姿をもった異国人が『左大臣』に任命されてしまうようなある意味『吸引力』の相当弱った、疲弊した国が、七君主に立ち向かう余力があるとは思えなかったし、カイオスの微妙な立場を考えてみても、そこから七君主への対抗勢力を集うということも、できなかった。
かといって、そのまま相手に石版を渡せてしまうものでもない。
それが引き起こす災厄くらいは、容易すぎるほどに見当がついた。
だから、全てを渡すことはしなかった。
といっても、手元に石版を残したのは、その時七君主に真っ向から立ち向かうことを選んだためからでなく、その場しのぎといった方が正しかったが。
アレントゥムへの王女の護衛に自ら志願したのは、石版を渡した後をそのままにしておくことができなかったからで、あとは、状況に身を任せていただけだ。
誰も死なず、殺されぬ道はないのか。
すでに『国境守備隊』が犠牲になった状況で、それ以上の被害を想定しないことは到底できなかったが、彼はそれを行動の念頭には置いていた。
ただ、『ミルガウスを襲いに行け』と命令された時だけは、『残り二つの石版を渡す』ことを条件に、七君主を懐柔したが。
別に、退屈な日常を過ごしていたと言うつもりも、充実してかなわない日々を送っていたと言うつもりも無い。
ただ、まるで自分がその国の人間になったかのような錯覚を抱いていた。
それを、自ら壊しに行くことは、できなかった。
そして、その代わりにあの女の石版を盗み出し、しかしアレントゥムは崩壊した。
…――その中で、――自分でも理解に苦しむが――あの時、なぜかあの女に石版を託してしまった。
それが…今回はたまたまいい方向に働いたに過ぎない。
許されるのは――称えられるのは、彼女であって、弾劾される者は、されなければならない。
冷めたような――しかし一点の妥協もない青い瞳が、サリエルをじわりと刺し貫いた。
「っ…!!」
確固とした意志を悟り、サリエルが唇を噛んだ、そのときだった。
「甘いのぅ、おぬし」
不意に、背後の闇が喋った。
カイオスは、もとより、サリエルも思わず身を竦ませる。
中年の、この場に在って、どこか人を喰ったような調子の声。
無礼千万極まりないことに、サリエルは、ついうっかり『彼』の存在を失念していた。
慌てて身体を譲る。
「…国王?」
元よりこちらは灯火の逆光になって見えにくいのだろう。カイオスの誰何に、ミルガウスを担う壮年の男は、しかし威厳もなにもない様子で、よいせっと言いながらかがみこむ。
異国の色をした臣下の面を、覗き込んで、にぃっと笑った。
「若いのう、おぬしも。――まあ、おぬしの悩みも分からんこともないんぢゃが」
「…」
「ちーとばかし、昔話をしようかのぅ」
言葉のない青年たちを前に、ミルガウス国王ドゥレヴァはふぬふぬと顎を掻く。
「――昔々…といっても、ほんの十年くらい前の話じゃが。わしは、その頃、ばりばりに賢王をしておった」
国王は、自分で言い切った。
「…はあ、そうですか」
「………」
若者たちの相槌にふっと目を細め、少し声の調子を違え、ドゥレヴァは先を続ける。
「そして、十年前…――その『賢王』は、闇の石版と共に、己の三人の子女を失ったのじゃ」
「「…」」
サリエルは息を詰め、カイオスは微かに目を細める。
ドゥレヴァは気負った様子もなく、紡いでいく。
「わしはの。嫌気が差してのぅ。何が賢王、何が永遠の最盛期に支えられた『不死の王国』か…と。――自分の子供も満足に守れん男がどれほどのものか、と思うての…。で、自分の手で、国を滅ぼそうとしたんじゃよ」
――軽い。
あまりにも軽快な口調が吐き出した、あまりにも暗く深い――血塗られた過去を無意識に連想して、傍に控えていたサリエルも、牢の中のカイオスも、――同時に息を詰めた。
『賢王の粛正』。
一応、王家を慮ってそう言われているが、要するに、『粛清』――ひいては、『弾圧』『虐殺』といって差し支えないほどの、シルヴェア末期最後の悲劇だ。
犠牲者は、シルヴェアの官僚たち。
賢王ドゥレヴァの命じるままに、無実のまま投獄され、無実のまま一家ごと断頭され、そんな王を諫めれば王に逆らったと、見せしめに殺され――狂気の荒れ狂うかのごとく、国情は重苦しく、恐怖の渦にたたきこまれた。
ほとんどの重職は十代、二十代の若者にゆだねられ――しかも、三大臣のうちの二つを奴隷や馬の世話係が占めるような状況になってすら…――しかしそれに異を唱える者も、唱えることも許されないほどの状況。
一気に加速した混乱の中、かろうじて残っていた前左大臣バティーダ・ホーウェルンもついに病に倒れ――シルヴェアの不死伝説を無条件に信じるシルヴェア国民たちの間にも、ある種の不安めいたものが漂う、――それほどの、大悲劇だった。
朝議は処刑場だったという。
賢王と呼ばれたドゥレヴァは、自らの手で、賢臣の誉れ高き者達を次々と断頭していったのだった。
そして、国名はミルガウスに移る。賢臣の断頭は下火となった。殺せるほどの官がいなくなったというのが実際のところだったが。
そうすると、今度は狂ったように対外戦争に乗り出して行った。
北の同盟国、ゼルリアとの抗争。冷戦状態にあった、アクアヴェイルとの海戦。
内側からだけでなく、外側からの圧迫。
国家の崩壊は間際に迫っていた。
――その時、一人の異国人がミルガウスにたどり着いた。
カイオス・レリュードがミルガウスに迎えられたのは、正に、ゼルリアとの戦局がもっとも不安定であり、賢臣バティーダの容態が生前でもっとも悪化した時期だった。
死に行くバティーダの推薦によって、それらの混乱を収束する形で、『他所(よそ)者』のカイオス・レリュードは左大臣の位に就いた。民衆は、彼を喜んで迎えたが、それは、出自がどうという事情よりも、アクアヴェイルやゼルリアとの、無益な戦争を止めたこと、さらには彼の就任に伴って、賢王の『粛正』が止んだことが何より大きな理由だった。
そして――不死の王国は、生き延びた。
不死の王国は、滅びる事は、なかった。
「わしはのぅ」
ドゥレヴァは語る。
「おぬしが現れたとき、負けた、と思うた。何をしても、どう画策しようとも――わしにこの国は…この、不死の名を冠する永遠の王国は、滅ぼせん、と。
随分と、自己満足甚だしい話じゃろう? 勝手に己に失望し、勝手に、国を滅ぼそうと、様々な人間を虐殺し…――それでも王として居座り続け、挙句におぬしが現れた途端に、その、この国に抗おうという衝動でさえも、勝手にあきらめた。そして、今も玉座を温め続けておる…。
犠牲になった者にとっては、随分と…マヌケで噴飯ものの話しよの。ただ――当時は本当に何かに取りつかれたようじゃった…。
しかし、あのぎりぎりの場面で、おぬしがこの国に来るとは…。よい人物を迎えられたものよ」
ひょほほ、と笑って、ドゥレヴァはカイオスを見た。
黒き瞳は、静かな意思に満ちていた。
「十年。十年で、二百万」
「………」
「じゃが、次の国王に譲るまでは、おぬしら若いモンが、のびのびできるよう、『全てを』託して、のほほんと国王を続けようとおもうてのぅ。今に至るわけじゃよ」
『全てを託して』と言い切った、ドゥレヴァの視線が意味深い。
それを灯火の向こうに見止めて、カイオスは、ふと口を割った。
「…――失礼ですが。ひとつ、お聞きしても?」
「何じゃ?」
「あの時――。石版が盗まれ、国境が突破された翌朝、謁見したときですが…――、あの時、気付いておられたのではないですか。俺が石版を盗んだと」
サリエルがはっと息を呑む。
カイオスは、じっと視線を注ぎ続ける。
ドゥレヴァは少し沈黙をはさんだ。
――ミルガウスの鏡の神殿に至るには、二つの『道』が在る。
ひとつは、常に近衛兵に守らせた、通常の道。
そして、もう一つは、王宮でも一部の者しか使えない、空間をねじまげた結界道。
後者の道を使えるものは、国王しか知らず、そちらの道を使えば、少なくとも、国王には察知されてしまう…。
カイオスは、石版を持ち出すとき、悟られないように細工を施してからことに及んだのだが、それでも、今の国王からは、すべてを承知していたような感が伝わってきたのだった。
「道を使った形跡はなかった。――よっぽどうまく細工しておったんじゃのう。だが…道を使える者たちの中で、わしに気付かれんほどの細工をできる者も、おぬし以外におらぬよ」
ドゥレヴァはあっさり言い切る。
「…では、なぜ…」
「わしは、あの時いうたはずじゃが? 『おぬしの判断に任せる。好きにしたらいい』と」
さらにこうも言った。この際何をしても、大して違うまい、と。
「………」
カイオスは、ため息をつき、サリエルは口を開ける。
国王は、全て知っていたのか。
その上で、あえてカイオスの思うとおりに動かしていたのか。
「ほほほ。国を託した男を信じてみせるのは、君主の度量のみせどころよの」
のほほんと笑いながら言い切ったドゥレヴァに対し、
(なんて、男だ…)
サリエルは、密かに思う。
度量が広いとか狭いとか、それ以前の問題の気がしてきた。
一方で、そうはいいながらも、国境守備隊が突破された後、危険が叫ばれる中でさえ王女たちの同行を変更しなかったのは、アベルをカイオスの『錘役』『監視役』とさせる目的でもあったためだろう。
本来護る立場の者を――しかも、自分の娘を、逆に足かせにして、疑惑の臣下を繋ぎとめる。
『信じてみせる』と言いながらも『賢王』と呼ばれたドゥレヴァの慎重さ、そして非情なまでの狡猾さが、ちらりと見え隠れしていた。
「ほほほ。過ぎたことは気にするでない。しかし、カイオス。おぬしのことじゃから、ここで全て投げ出すような軽薄な 真似はすまい?」
ん? とあたかも挑発をするかのように覗き込む瞳は、底知れぬ光を宿している。
それは、気の遠くなるような数の人間を、己の自己満足のために惨殺し、そして今ものうのうと生き続けるドゥレヴァ・シル・セレステア・ミルガウスという男の、己の罪を見据え、それを背負うという覚悟のこめられた、ゆるぎない光だった。
「わしからおぬしに言えることは、ひとつだけじゃ。
死に逃げるな。
――どんななりゆきや状況があれ、おぬしが背負うもんにはとてつもないものがあるじゃろうが、…まあ、人生、経験じゃしの。背負って――背負って、生き抜いてみせよ、『カイオス・レリュード』」
ドゥレヴァの声は、深く闇に反響し、どこか敬虔な響きをもって、聞き入る者を打ち付ける。
「………」
それは、ある意味での宣告だった。そして問いかけだった。
目の前の『青年』が、ミルガウス国左大臣『カイオス・レリュード』として、すべてを背負って残りの生を生き抜くのか、それとも、名もなき異国人の、不明な出自を全ての理由として、自らの命を投げ出すのか。
王者たる男は、その眼で今、見極めようとしている。
青年の――覚悟と、真意を。
返答はない。
その代わりに、ただじっと注がれる青の光は、苛烈に国王をさし貫いていた。
そのまなざしを受けて、ドゥレヴァは笑った。
意を得た者の、満足げな笑いだった。
「どうやら、まだ死んではおらぬようだの」
そして、ミルガウス国王ドゥレヴァはすっと立ち上がると、静かに臣下を睥睨した。
一つ息を置き、重みを増した静寂の中を、轟きのような低音がおごそかに紡がれ始め、朗々とした響きが、死の蔓延する石牢に深々とこだましていく。
「ここに、おぬしに申し付ける。他の事象はともかく、左大臣の身でありながら、石版を持ち出した責は重い。よって、一時左大臣の身分を剥奪し、その上で勅令を申し付ける。
各地に散らばったという闇の石版を、できうる限りをつくして、再びこのミルガウスに持ち帰れ」
「…」
カイオス・レリュードは、それまで壁にもたれていた背を、緩慢な動作で起こした。
君主に対する礼儀をもって、彼はおごそかに応えた。
「御意」
石牢の鍵が開かれる。
ほとんど同じ体勢で、最低限しか食を取っていない身体は、嫌が応にも崩れた。それを黙ってサリエルが横から支える。
「あぁ、そうカニ」
ふっと思い出したように国王が告げる。
「おぬしひとりだと、大変じゃろ? ちゃんと、連れもいるカニよ」
『連れ』。
この、二文字の言葉に、とてつもなく、奇妙な予感を感じて、カイオスは思わず反芻する。
「『連れ』………ですか」
傍で、サリエルが噴き出す。
国王は、ただ笑う。
ふっと思い出したように、壮年の王は腰にさしていた己の剣を抜き、カイオスの方に差し出した。
「おぬしに託す。ちゃんと、持ち帰れよ」
二人の青年は、今宵何度目か…――目を、見開いた。
ドゥレヴァが差し出したのは、代々の王に継がれる聖剣、国宝『ファルシオン』だった。
しばらくためらったあと、金髪の青年は、しっかりとそれを受け取る。
にやりと笑って国王は、その肩を叩いた。
闊達に続ける。
「ま、アレじゃよ。――いろいろ世界を廻ってくるがよいカニよ。『連れ』と一緒に、の」
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