Lost Words
    神は始め、天地を創造された。「光あれ。」――こうして、光があった。
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  第一話のあらすじ 
* * *
 『光あれ』――こうして、光があった。


 かつて、世界は三つの楽園だった。
 天使たちが、天使イオスの下で、創世神の栄光を謳い上げる、空の楽園『天界』。
 魔族たちが、魔王カオスの下で、創世神の畏れ敬い、称えていた、地下の楽園『地界』。
 そして、時を司るノニエルの監視の下、創世神の望むままに『感情』を持たないままに純粋な時を過ごしていた、人の住む狭間の楽園『地上』。

 しかし、長い時の経過、そしてそれに伴う、天界地界の命さえ操るという文明の発展は、徐々に神のみ遣いたちに慢心を生じさせる。
 それは、暗き地下に棲む魔族への優越感情となり、やがて魔族たちは、その蔑みを『快楽』として受ける術を身に付けていった。

 だが、それにも限界がある。
 向けられる憎しみに、魔族が我を忘れ狂った時、彼らは大群を成して天界へ攻め込もうとした。
 天界の天使たちは、それを迎え撃つべく、出撃した。

 両軍は地上で激突した。

 第一次天地大戦の始まりだった。


 天界の長イオスと、魔族の王カオスは、相打ちとなる。
 彼らの魂は、互いの身体を刺し貫いて、四散した。
 その後、長引く戦争の無為を悟った、天界地界両軍それぞれの四将によって、天界、地上、そして地界を分断する、結界が成された。
 天界側の結界を『光の石版』、地界側の結界を『闇の石版』。
 天界軍地界軍の四将は、命を張って、結界を張った後、自身の剣に魂を託して、果てた。

 結界による、世界の分断――即ち、自分達の世界への帰還が適わないことを悟った天使、魔族たちは、こぞって地上から撤退していった。
 しかし、多くの者は地上に取り残された。
 また、天使たちは戦争の原因を作ったために、創世神から天界の追放を命じられ、地上に逃れる。
 人間との共存を選んだ彼らは、後に『混血児』と呼ばれ、迫害の対象となる。


 感情を持たなかった『人』は、第一次天地大戦を通して、『感情』を手にした。
 それによって神の望むままに純粋であることを捨てた彼らは、時を司るノニエルの支配から逃れ、自身の『時』を謳歌し始める。
 時の『監督者』ノニエルは、その役目の終わりを感じ、自身の身体を二つに裂いた。
 人の時を見守る、傍観者『千年竜』。
 流転の女神、『不死鳥』。

 同時に『人』は、それまでは天使や魔族たちが司っていた、『属性』の力も手にするようになる。
 限られた属性の継承者――『属性魔法』の使い手は、人のあこがれと羨望の的となり、後に『無属性魔法』と呼ばれる独自の魔法論理が築かれていく。

 そして、三世界が精神的に交わる地――光の石版、闇の石版を護る存在としての、空前の大国の礎となる、『ソエラ朝』の建国。
 人は、己の栄光を謳い上げるようになった。


 だが、その平穏にも影が落ち始める。
 きっかけは、地上と天界を結ぶ『光の石版』と、歴史の未曾有の喪失『大空白時代』をはさんだ、『闇の石版』の相次ぐ崩壊だった。
 天使のいない天界側の『光の石版』は、存在しなくても問題がない。
 だが、『闇の石版』は魔族の――負の感情を享楽と感じる魔族の棲む地界、改め地獄との結界である。
 当時の聖地の守護国――シルヴェア国によって闇の石版の回収は急がれたが、それでも砕け散ってから再び集まるまでに、三十年ほどを費やした。
 その間に、闇の石版は強大な負の力を集め、やがて『七君主』と呼ばれる強大な魔族を生み出すにいたってしまった。

 そして、再び石版が集ったのもつかの間、ある日、聖地の守護国『シルヴェア』の当時の王位継承者を巻き込んで、闇の石版は再び崩壊する。

 そして、十年が経った。

■ ■ ■

第一話***ティナ・カルナウス+クルス編

 二つの闇の石版の欠片をたずさえて、石版を守護する王国、シルヴェア改め『ミルガウス』を訪れた旅の魔道士ティナとクルス。
 二人は、ふとしたことから、石版の安置場所『鏡の神殿』の敷地に迷い込むが、運悪く鏡の神殿は『何者か』に放火されていた。
 心無い誤解から、放火犯と決め付けられ、抑留される二人に、さらに追い討ちをかけるように、それまで鏡の神殿に安置してあった『闇の石版』が盗まれているとの知らせが入る。
 石版を盗んだものには、極刑。
 しかし、審問の場において、ティナたちは何とか誤解を解く事に成功し、一転、盗まれた石版を取り戻すミルガウス国の王女への護衛を依頼される。

 お家騒動の真っ最中だったミルガウス国内では、第二王位継承者アベルと、第三王位継承者カオラナのどちらがふさわしいか、石版の奪回に貢献させることで測ろうとしたのだ。
 第二王位継承者アベルの護衛を任されたティナとクルスは、ミルガウスの若き左大臣カイオス・レリュードと共に、一路、犯人が去ったと思われるアレントゥム自由市を目指す。


 アレントゥム自由市に到着したティナたちは、平時ならば決して町に近寄らない魔族の急襲を受ける。
 そこから、ティナたちはアレントゥムの近くに、魔を呼び込む魔石――石版が眠っていると考えた。
 直後、ティナはその考えを明かした、異国人たる容姿をもつ左大臣カイオス・レリュードから、自分が持っていた石版を奪われる。
 追いすがる彼女に、彼は語った。
 ミルガウスの鏡の神殿から石版を盗んだのは、自分で、それは大いなる闇の意思――魔王カオスを復活させるためだ、と。


 十年前、無属性魔法の権威であり、アクアヴェイルという国の名宰相だったダグラス・セントア・ブルグレア。
 彼の息子も、その資質を受け継ぎ、同国の皇子の代わりに当時の敵国へ人質にやらされる程だった。
 しかし、人質としての期限を終え、帰国するダグラスの息子を不慮の事故が襲う。
 彼は、帰国を果たすことなく、死んでしまった。
 父であるダグラスは、それをひどく悲しんだ。
 そして、世界を恨んだ。
 彼は遁走し、自身に七君主を宿らせ、大いなる闇の意思を復活させるよう企む。
 ダグラスの身体をのっとった七君主は、石版を集め、魔王の魂を降臨する石の欠片――石版を集めるための、手足となる自身の『分身』を作り出した。
 カイオス・レリュード。
 異国人ながら、ミルガウス国の執政を担う彼は、その『分身』だった。


 『カイオス・レリュード』の口から、それを聞かされ、呆然とするティナ。
 直後、魔王復活の時期を悟った『ダグラス』――彼をのっとった七君主によって、アレントゥム自由市は魔王復活への生贄として、滅ぼされてしまう。
 『町が滅ぼされていても、まだ平然として七君主についているつもりか』
 ティナの言葉が届いたのか、彼は、自分が隠し持っていた最後の石版の欠片をティナに託す。


 七君主と対峙するため、彼が居るアレントゥム外れの遺跡『光と闇の陵墓』に乗り込んだ、ティナ・カルナウス。
 魔王復活の呪文を唱えた七君主に対して、彼女は、属性継承者の特権である、召喚術を行う。
 彼女の属性『火』の最高霊獣、不死鳥によって、七君主のたくらみは未然に防げるが、戦いの余波で、せっかく集まっていた七つの石版の欠片の内、六つはばらばらになってしまった。

 責任を感じたティナは、相棒のクルスと一緒に、石版を再び集めるための旅に出る。
 王家の王女アベルや、官位を一時返上したカイオスと共に、彼女たちは北の軍事大国ゼルリアを目指すことになった――

■ ■ ■

第一話***カイオス・レリュード編

 出自や名前を明かさず、ミルガウスで執政をしていた『カイオス・レリュード』の元に、ある日七君主からの接触がある。
 ミルガウスに安置してある鏡の石版をもってこい。
 さもなければ、ミルガウスを滅ぼしてやる、と。

 彼は、石版を盗み出した後、自身と同じ、七君主の『分身』である男に、石版を渡す。
 その後、ティナ・カルナウスらと共に、アレントゥム自由市に赴いた彼は、接触した七君主から、ミルガウスを襲い、聖地を破壊することによって魔界の瘴気を地上に導けといわれる。
 ミルガウスを襲いに行く代わりに、ティナ・カルナウスが持つ二つの石版の欠片を持ってくることを、提案するカイオス。
 その後、実際に彼はティナから石版を盗むと、七君主へと渡す。

 対峙したティナ・カルナウスに、彼は自分の正体と、自分の息子を失ったダグラス・セントア・ブルグレアの過去を話した。
 直後、魔王復活の時期を悟り、その生贄とするために、七君主はアレントゥム自由市を滅ぼす。
 激昂したティナに石版を託し、その後クルスやアベルと合流した彼もまた、七君主のいる遺跡『光と闇の陵墓』へ向かった。

 結果的に、ティナ・カルナウスの召喚術によって、七君主のたくらみは未然で防げる。
 しかし、集まりかけていた石版は、再び砕け散ってしまった。

 カイオス・レリュードは、全ての悲劇の発端が、最初に闇の石版を盗んだ自分にあるとし、その命で詫びようとする。
 しかし、ミルガウス国王ドゥレヴァの激励と挑発によって、彼もまた、ティナらと共に、石版を探すための旅に出た。

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第一話***海賊+ゼルリアの将軍編

 ミルガウスの鏡の神殿から、闇の石版が盗まれた――その知らせを受け取った、ミルガウスの同盟国、北方の軍事大国ゼルリアは、自身の国からも、犯人が逃げたと思われるアレントゥム自由市に人を派遣する。
 それは、ゼルリア国を担う将軍、アルフェリアとベアトリクスだった。

 彼らは、アレントゥムに赴くが、直後に魔族の急襲にあう。
 その不自然さから、石版がアレントゥムにあるとほぼ確信した、二人の将軍は、その地で旧知の海賊――ロイドたちに会う。

 アレントゥム観光に来ていた海賊たちとともに、石版がアレントゥムにあることについて話している最中、突如、アレントゥム自由市は『崩壊』する。
 どうやら『光と闇の陵墓』になにかありそうだと悟ったアルフェリアと海賊船の副船長は、そこに行った先で、信じられないものを目撃した。

 立ち昇る、邪悪な魔力と、それを吹き散らした『光』の奇跡。

 崩壊したアレントゥムに戻り、救援活動を助ける彼らの脳裏に、その奇跡はしっかりと根付いていた。

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第一話***ジュレス+ウェイ編

 ふとしたことから、アレントゥム自由市を訪れていた、二人の女性ウェイとジュレス。
 彼女たちは、それぞれ疑念を感じて、アレントゥム自由市『光と闇の陵墓』へと訪れていたが、そこで邂逅する。
 光の奇跡を目の当たりにし、呆然とした彼女たちの前に、傷だらけの人物が『現れ』る。
 それは、七君主の『分身』の一人だったが、彼女達はそれを知らない。
 何も知らないまま、二人は彼を介抱することにする。

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第一話***レイザ+カオラナ編

 ミルガウス王国第三王位継承者『カオラナ』とその付き人、レイザ。
 七君主のたくらみ。
 闇の石版の行方。
 そして、魔王の復活。
 全てを知り、七君主とも『旧知』のように振舞うカオラナに対し、レイザは悔しそうに唇をかみ締めているしかない。
 全てが終わり、ミルガウスに帰国した彼女たちは、『日常』へ戻っていく…。

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