Lost Words
    神は始め、天地を創造された。「光あれ。」――こうして、光があった。
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  第四章のあらすじ 
* * *
 ゼルリア巡視船なぞの大破事件に、闇の石版が関わっていると見たティナたちは、海賊であり同時にゼルリア国王の義弟であるロイドの海賊船に乗って、デライザーグの港を出立した。
 問題の海域は、航海に丸一日を要す。
 その間、さまざまな人間の思惑が入り乱れることとなった。

 ミルガウスの左大臣カイオス・レリュードが、敵国であるアクアヴェイルの内通者だと疑う、ゼルリアの将軍アルフェリアは、彼を呼び出して詰問する。
 それに対し、『石版を持ち出したのは自分だ』と認めたカイオスは、アルフェリアの疑惑を真っ向から受け、さらに、持ち主の魔力を莫大に消費して持ち主の望む知識を与える魔封書を用いて、三ヶ月で石版を集めるといってみせた。

 一方ティナは、アルフェリアや同じくゼルリアの女将軍サラとの話を通して、カイオス・レリュードの微妙な立場を知る。
 さらに、彼が魔封書を用いていることを知って、いつかの夜のわだかまりが解けたのだった。

 そして、海賊の船長ロイドは、副船長の名前を呼ぶ。
 ――フェイ、と。
 それは十年前、シルヴェアの石版が砕け散ったとき、他の兄弟とその場に居合わせ、ただ一人残った王位継承者――そして、石版決壊の疑いを向けられ、崖から転落、行方不明になっていた王子の名前だった。
 答える副船長のローブの向こうで、忌み嫌われる混血児の証である、銀色の髪が揺れる。

 その最中、ティナはまたも夢を見る。
 船上で、涙をこぼしながら何かを海に捨てる女性――。
 その女性に何となく今回の件に関係ありそうな予感を覚えて、ティナはロイドに今回向かっている海域のことについて、詳しく聞いてみる。

 『妾将軍の宝の海域』。
 はるか昔、ミルガウスの前身であるソエラ朝の王、デュオンが、大版図を実現する際、王の『妾』ながら多大な功績をあげた『妾将軍』。
 その後、戦績の評価に不満を感じた彼女は、当時のソエラ朝北部に行き、その地を分離・独立させ、『セドリア王国』と称す。
 それが、現在のゼルリア国の礎となったのだった。
 そんな妾将軍だが、彼女の本名、肖像画、そして彼女にまつわる文書も何も残ってはいない。
 だが、口承によって、彼女が非常に魔力の高い宝を海に落とし、それを自身の『守護聖獣』に護らせているという話が伝わっていた。
 そんな彼女の宝が眠るとされる『妾将軍の宝の海域』。
 そこに差し掛かった瞬間、異変が起こる。

 洋上に佇む、不気味な球体。
 その周囲に散らばる、海鳥、魚、そしてばらばらになった船の残骸――
 妾将軍の宝を護る守護獣に、アレントゥムで砕け散った闇の石版が融合したのだ。
 光球の不気味な魔力によって、船はかじが聞かないまま、不可抗力的に吸い寄せられていく。
 そして、放たれる死の衝撃破。
 海賊の副船長ジェイドの防御魔法で何とか一撃を凌ぐが、大きく船が揺れた拍子に、ティナは船体の外に放り出されてしまった――。

* * *
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