不穏なけはいをつかませてひそむ、得体の知れない気配。
そんな緑の館で、カイオス・レリュードと共に過ごすティナは、ある夜、シェーレンの城から訪れたアルフェリアの言葉に従って、アベルとともに一晩の留守を守ることになる。
ひきこもったアベル、かえって来ないクルス。彼らに思いを馳せながら、彼女は同時に、連れ立って出て行ったアルフェリアとカイオスの行く先に、重いため息をつくのだった。
二人連れ立って、夜中の酒場を訪れた、カイオス・レリュードとアルフェリア・ラルバスク・J・フェーダン。
カイオスの出自についての話をひと段落させ、ゼルリアの将軍は、けはいを漂わせて自分たちを監視する人間達の、『心当たり』について問う。
『心当たり』はないものの、シェーレン国で多発する異国人の子供や、混血児の行方不明が多発しており、その影に、シェーレン国家の影が見え隠れしていることを、カイオスは示唆した。
酒を酌み交わしながら、話を進める彼らの耳に、ふと喧騒が飛び込んできた。
場にそぐわない、女が、酔っ払いに絡まれていたのだ。
助けようと腰を上げたアルフェリアは、カイオスが呟く声を聞く。
『マリア』と。
その声に反応したように、絡まれていたシェーレン人の女は、振り向いた。
二人の視線が交わり、時間を止めた――ようにみえた。
一方、兄とともに連れ立っていったまま、戻らないクルスは、とある場所に閉じ込められていた。
周りには、幾人もの異国人や混血児。
人攫いにさらわれた、とクルスはしょんぼりと肩を落とすのだった。
そして同じ頃、とある砂漠の海岸線で、一人の混血児が遊んでいた。
ふと、海賊船の副船長が目を話した隙に、彼は連れ去られてしまう。
子供の身を案じたロイドと副船長は、盗賊を締め上げて、連れ去られたおおよその場所を聞き出す。
シェーレン国首都『アクアジェラード』。
彼らはその地をめざし、飛び出したのだった。
重症の『意思あるダグラス』を、看病するジュレスとウェイは、そこでスリの少年に、石板をすられてしまう。
闇の石板を介して、少年に流れ込む、闇の魔力。
それは、七君主マモンが再び魔の手をさしむける、ほんの予兆にすぎなかった…。
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